法人向けLLM API比較 - コスト・性能・セキュリティ観点での選び方
この記事で分かること
- 主要LLM API(OpenAI、Anthropic、Azure、AWS、Google)の特徴比較
- 法人利用で重要な セキュリティ・コンプライアンス の違い
- ユースケース別のおすすめ選定フロー
- コスト試算の考え方
1. 法人がLLM APIを選ぶときの3つの軸
個人利用と法人利用では、LLM選定の基準が大きく異なります。
「最新モデルが使いたい」という技術的な興味だけでなく、 セキュリティ審査を通せるか 、 コストを予測できるか といったビジネス要件が重要になってきます。
選定の3軸
| 軸 | 個人利用 | 法人利用 |
|---|---|---|
| 性能 | 最新・最高性能 | 用途に十分な性能 |
| コスト | 安ければ嬉しい | 予測可能性が重要 |
| セキュリティ | あまり気にしない | 最重要(審査必須) |
特に日本企業では、 「データが海外に出ないこと」 を要件とするケースが多く、この点で選択肢が絞られることがあります。
2. 主要LLM APIの比較一覧
2.1 サービス概要
| サービス | 提供元 | 主要モデル | 特徴 |
|---|---|---|---|
| OpenAI API | OpenAI | GPT-5、GPT-4.1、o3 | 最も普及、日本データレジデンシー対応 |
| Anthropic API | Anthropic | Claude Opus 4.5、Claude Sonnet 4.5 | 長文処理に強い、安全性重視、ISO 42001取得 |
| Azure OpenAI | Microsoft | GPT-5、o3(Azure経由) | エンタープライズ向け、日本リージョンあり |
| Amazon Bedrock | AWS | Claude 4.5、Titan、Llama等 | マルチモデル、日本クロスリージョン推論対応 |
| Google Vertex AI | Gemini 3 Pro、Gemini 3 Flash | Google Cloud統合、ISMAP登録済み |
2.2 セキュリティ・コンプライアンス比較
法人導入で最も気になるポイントを比較します。
| 項目 | OpenAI API | Anthropic API | Azure OpenAI | Amazon Bedrock | Google Vertex AI |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本データレジデンシー | あり(2025年5月〜) | なし(※1) | あり(東日本) | あり(東京・大阪) | あり |
| データ学習への利用 | Business/APIは不使用 | デフォルトで不使用 | 不使用 | 不使用 | 不使用 |
| SOC 2 | Type 2 | Type 2 | Type 2 | Type 2 | Type 2 |
| ISO 27001 | 取得済み | 取得済み | 取得済み | 取得済み | 取得済み |
| ISO 42001(AI管理) | - | 取得済み | - | - | - |
| ISMAP | なし | なし | 登録済み | 登録済み | 登録済み(2024年7月〜) |
| 契約形態 | オンライン/Enterprise | オンライン/個別 | EA契約可 | AWS契約に準拠 | GCP契約に準拠 |
※1: Anthropic APIは米国サーバーが基本。日本データレジデンシーが必要な場合は Amazon Bedrock経由 または Google Vertex AI経由 で利用可能。
ポイント:
- 日本の官公庁・金融機関 → ISMAPが必要な場合、Azure OpenAI / Amazon Bedrock / Vertex AI が選択肢
- データの国内保持が必須 → 日本リージョン・データレジデンシー対応サービスを選択
- Claudeを日本国内で使いたい → Amazon Bedrock(日本クロスリージョン推論)またはVertex AI経由
- 既存クラウド契約を活用したい → Azure/AWS/GCPの既存契約に追加
- 社内ルール整備が必要 → AI利用ガイドライン策定ガイドも参照
2.3 コスト比較(2026年1月時点の参考価格)
価格は頻繁に変動するため、概算の目安としてご覧ください。最新価格は各公式サイトで確認してください。
OpenAI モデル
| モデル | 入力(100万トークン) | 出力(100万トークン) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| GPT-5 | $1.25 | $10.00 | 最新フラッグシップ、400Kコンテキスト |
| GPT-5.2-Codex | — | — | コーディング特化、長時間エージェントタスク向け |
| GPT-4.1 | $2.00 | $8.00 | 汎用コーディング、1Mコンテキスト |
| GPT-4o | $2.50 | $10.00 | マルチモーダル、安定運用向け |
| o3(推論モデル) | $2.00 | $8.00 | 複雑な推論・数学・科学向け |
| o3-mini | $0.55 | $2.20 | 軽量推論モデル |
※ GPT-5.2-Codex はResponses API専用。Codex環境での長時間タスク(リファクタリング、マイグレーション等)に最適化。
Anthropic モデル
| モデル | 入力(100万トークン) | 出力(100万トークン) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Claude Opus 4.5 | $5.00 | $25.00 | 最高性能、コーディング・エージェント向け |
| Claude Sonnet 4.5 | $3.00 | $15.00 | バランス型、1Mコンテキスト対応 |
| Claude Haiku 4.5 | $1.00 | $5.00 | 高速・低コスト |
Google モデル
| モデル | 入力(100万トークン) | 出力(100万トークン) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Gemini 3 Pro | $2.00 | $12.00 | 最新フラッグシップ、ベンチマーク最高水準 |
| Gemini 3 Flash | $0.50 | $3.00 | 高速・低コスト、無料枠あり |
| Gemini 2.5 Pro | $1.25 | $10.00 | 安定運用向け |
コスト削減オプション:
- Batch API: 50%割引(24時間以内の非同期処理)
- Prompt Caching: 最大90%削減(繰り返しコンテキスト)
月額コスト試算例:
社員100名が1日10回、平均1,000トークンのやり取りをする場合:
| モデル | 月額概算 |
|---|---|
| GPT-5 | 約$450(約6.8万円) |
| Claude Sonnet 4.5 | 約$720(約11万円) |
| Gemini 3 Flash | 約$140(約2.1万円) |
3. ユースケース別おすすめ
3.1 選定フローチャート
flowchart TD
A[LLM API選定開始] --> B{データの国内保持が必須?}
B -->|Yes| C{既存クラウド契約は?}
B -->|No| D{重視するポイントは?}
C -->|Azure| E[Azure OpenAI]
C -->|AWS| F[Amazon Bedrock]
C -->|GCP| G[Vertex AI]
C -->|なし| H[Azure OpenAI推奨]
D -->|性能重視| I[GPT-5 / Claude Opus 4.5]
D -->|コスト重視| J[Gemini 3 Flash]
D -->|長文処理| K[Claude Sonnet 4.5]
D -->|推論・数学| L[o3 / Gemini 3 Pro]
3.2 ユースケース別おすすめ
| ユースケース | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| 社内チャットボット | Azure OpenAI / OpenAI API | 日本データレジデンシー対応、Enterprise契約可能 |
| ドキュメント要約 | Claude Sonnet 4.5 | 長文処理(1Mトークン)に強い |
| コード生成(エージェント) | GPT-5.2-Codex | 最新のコーディング特化モデル、長時間タスク対応 |
| コード生成(汎用) | Claude Opus 4.5 / GPT-4.1 | バランス型、高性能 |
| 複雑な推論・分析 | o3 / Gemini 3 Pro | 推論特化、数学・科学に強い |
| 大量バッチ処理 | Amazon Bedrock | AWSインフラとの統合、日本クロスリージョン対応 |
| マルチモーダル | GPT-5 / Gemini 3 Pro | 画像・音声理解が必要な場合 |
| コスト最優先 | Gemini 3 Flash | 3.00で高性能、無料枠あり |
| ISMAP必須 | Azure OpenAI / Bedrock / Vertex AI | 官公庁・金融機関向け |
4. 導入時のチェックリスト
LLM APIを法人導入する際に確認すべき項目をまとめました。
関連記事: API選定と並行して、社内のAI利用ルール整備も重要です。 → AI利用ガイドライン策定の進め方 - サンプル規定付き
4.1 セキュリティ審査向け
| カテゴリ | チェック項目 |
|---|---|
| データ取り扱い | 入力データがモデル学習に使用されないか |
| データの保存期間と削除ポリシー | |
| データの暗号化(転送中・保存中) | |
| 認証・認可 | API キーの管理方法 |
| IPアドレス制限の可否 | |
| 監査ログの取得可否 | |
| コンプライアンス | 必要な認証(SOC 2、ISO 27001、ISMAP等) |
| 契約書の締結方法(オンライン/個別) | |
| 準拠法・管轄裁判所 |
4.2 運用設計向け
| カテゴリ | チェック項目 |
|---|---|
| コスト管理 | 利用量の上限設定が可能か |
| 請求アラートの設定 | |
| 部門別のコスト配賦方法 | |
| 可用性 | SLA(稼働率保証) |
| レート制限(RPM/TPM) | |
| 障害時の代替手段 |
5. よくある質問
Q1: OpenAI API と Azure OpenAI は何が違うの?
A: 同じGPTモデルを使いますが、提供元と契約形態が異なります。
| 項目 | OpenAI API | Azure OpenAI |
|---|---|---|
| 契約相手 | OpenAI社 | Microsoft社 |
| 支払い | クレジットカード / 請求書 | Azure請求に統合 |
| 日本データレジデンシー | あり(2025年5月〜) | あり(東日本リージョン) |
| SLA | Enterprise契約で提供 | 99.9%(有料プラン) |
| ISMAP | なし | 登録済み |
2025年以降、OpenAI APIも日本データレジデンシーに対応したため、選択肢が広がりました。 ISMAPが必須でなければ、OpenAI APIでも法人利用が可能です。
Q2: 「データが学習に使われない」はどう確認する?
A: 各サービスの利用規約・DPA(Data Processing Agreement)を確認します。
- OpenAI: Business/Enterprise プランで明示的にオプトアウト
- Anthropic: デフォルトでAPI経由のデータは学習に不使用
- Azure/AWS/GCP: クラウドベンダーのDPAが適用され、学習不使用が明記
Q3: 小規模チームでも Azure OpenAI は使える?
A: 使えますが、申請・審査が必要です。
- Azure アカウントを作成
- Azure OpenAI の利用申請フォームを提出
- 審査通過後(数日〜数週間)、リソース作成可能に
小規模でスピード重視なら、まず OpenAI API で開発し、本番で Azure OpenAI に移行するアプローチもあります。
まとめ
法人向けLLM API選定のポイントをおさらいします。
- セキュリティ要件を最初に確認 → データ国内保持、ISMAP等
- 既存クラウド契約を活用 → Azure/AWS/GCPとの統合でコスト・運用を最適化
- ユースケースに合ったモデルを選択 → 最高性能が常に正解ではない
- コストは月額試算で比較 → トークン単価だけでなく、実際の利用量で計算
2025〜2026年の主な変化:
- GPT-5登場(2025年8月): GPT-4oより高性能かつ低コスト
- 推論モデルの普及: o3シリーズにより複雑な分析・数学タスクが実用レベルに
- Gemini 3登場: ベンチマーク最高水準、Gemini 3 Flashは低コストで高性能
- Claude 4.5シリーズ: コーディング・エージェント用途でトップクラス
- 日本データレジデンシー拡充: OpenAI API、各クラウドベンダーで対応
参考情報源
本記事の情報は以下の公式ソースに基づいています:
OpenAI:
Anthropic:
Google:
クラウドベンダー:
更新履歴
| 更新日 | 内容 |
|---|---|
| 2026-01-24 | 初版公開(GPT-5、o3、Gemini 3、Claude 4.5等の最新モデル情報) |
ご注意: 本記事は2026年1月時点の情報に基づいています。価格・機能・認証状況は頻繁に変更されるため、最新情報は各サービスの公式サイトをご確認ください。
